逃げた先に待っていたもの
こんばんは。ヤマです。
最近、 一緒に仕事をしている先輩(年配の女性)が僕の挙動を見た後、態度が優しくなるということがありました。
何かしら問題がある人と判断したのでしょう。
なんと言いますか、人としては嬉しいけれども、社会人としては悲しい。
複雑な気持ちになりました…
今回は屋久島に旅行、ではなく現実逃避するために行ったときのことをお話しします。
どこか遠くへ逃げたかった。
営業で働いていた仕事を辞めた後、僕はどこか遠くに逃げたいという気持ちに駆られていました。
できるだけ遠くに、誰も自分のことを知らない土地へ。
その土地についたらボロボロになった体や心は癒やされる…なぜかそう思っていました。
選んだ場所は南の島、屋久島です。
もののけ姫のモチーフとして使われた白谷雲水峡や縄文杉で有名な屋久島。
その屋久島の神秘的な森の中で知的な女性が読書をしている宣伝のポスターを見たのが決め手でした。
厨二病がぬけ切らない僕は小難しい文学作品を屋久島の森の中で読んだらきっと何かわかるかもしれない、救われるかもしれない、となぜかそう感じたのです。
ADHDらしい単純なインスピレーションですね…
思い立ったが吉日、すぐに屋久島行きのチケットを手配し、向かいました。
その先に惨事が待っているなど知りもせずに…
電車、 飛行機、フェリーを乗り継ぐこと7時間弱、僕は屋久島に着きました。
一度、鹿児島空港を経由してそこからフェリー、高速船、飛行機から屋久島行きの移動手段を選べます。
僕は時間がかかり、一番安いフェリーに乗りました。
節約の意味合いもありましたが時間をかけて海を渡ることで旅の雰囲気を味わいたかったからです。
天気にも恵まれフェリーに乗っている時間はとても気分が良く、これから屋久島に辿り着くと思うと気分が高まります。
(ただ海の上で過ごす4時間は長いもので後半は少し飽きてしまいました…予算に余裕があれば行きは高速船、帰りは飛行機がオススメです)
無事、屋久島に着き僕はレンタルしてあった原付きを取りに行き、そのまま予約してあった民宿に泊まりました。
翌日は朝から縄文杉を観に行った後、目星をつけていたゲストハウスを探すことに。
そのゲストハウスは正確にはライダーハウスというバイク、自転車を乗る人向けに安く提供される宿泊施設でみんなで料理を食べたりお風呂に順番に入ったりなど共同生活をするようです。
僕は宿泊中にライダーと仲良く慣れたらいいな、と思っていたのですが宿泊していた多くは乗り物を持たない観光客でした。
そして、その日から個性豊かな人たち(僕もその一人ですが…)との共同生活が始まりました。
逃げた先にも適応できない
共同生活を始めてからすぐに違和感を感じました。そしてそれが居心地の悪さだとわかるまで時間はかかりませんでした。
間取りは2段ベットに共有スペースのみ。
個人の空間がないので否応なく他の宿泊客と関わることになります。
それを望んできたはずだったのにうまく振る舞えない…
共有スペースとはいえ誰しもが「ここからここは私の空間」と無言で主張するんですよね。
僕はそういったやりとり、かけひきが極端に苦手で、そのことを忘れていました。
このままではいけないとすぐに出かけることにしました。白谷雲水峡をハイキングしたりバイクで島を廻ったり大自然を満喫し「屋久島に来たんだ!」と実感したものです。
特に白谷雲水峡は小雨ということもあって幻想的な風景を見ることができました。(屋久島で一番おすすめです)
ですが宿泊施設に帰りたくない、という思いが強く夜中に帰り宿主さんに怒られれてしまうことに…
そして滞在していた時は雨の日が多くライダーズハウスから出れずにぎこちないコミュニケーションに悶々としていました。
そんな様子を見ていた看護師の方が
「あなたADHDでしょう」
と話しかけてきました。職業柄僕みたいな人を多く見てきたのでしょうか。
この一言に僕はひどく動揺しました。
彼女は思ったことが口に出てしまいしまった、と感じたのでしょう
「でも今は治療薬もあるし…」
と神妙な面持ちフォローを入れてくれましたがその時の僕はそれが僕を責めているように感じました。
お前が挙動不審のせいでみんなが迷惑しているんだよ、となぜかそう捉えてしまったのです。
そしてすっかり心のバランスを崩してしまった僕は夜、みんなで持ち寄ったお酒の席で記憶がなくなるまで飲んでしまい周りにえらい迷惑をかけてしまいました。
飲み会の翌日には帰りの便があったため、ろくに謝ることもできず逃げるようにして屋久島を後にしました。
今になって思う
今思い返してみると宿泊していた人たちはみな、僕のように現実に疲れた人たちが多かったです。
ADHDに気づいた看護師の方も「仕事はいかがですか」と話を振ると顔を青ざめて無言になっていました。
彼女が帰る前日の夜も「私、帰りたくない…」と心から帰りたくなさそうな顔でつぶやいていました。
傷ついた人たちが集まる場所だったんですね。
そのことを冷静に理解していればもう少しうまくやれていたのではと今でも後悔しています。
無理して身の上話をしないで
- ご飯がおいしいね
- 〇〇は素敵な場所だったから一緒に行ってみよう
などたわいのない話をしていればよかったんです。
唯一、嬉しいことがあり、帰りの空港で「進撃の巨人」という漫画に出会うことができたことです。
進撃の巨人のテーマは絶望(たぶん…)その時の自分の心境にぴったりだったのでえらく感情移入していまいました…
逃げた先に待っていたもの
屋久島に行く前は屋久島にさえ着けばそこは楽園だから心が楽になると思っていました。
実際に僕以外の宿泊客はそれぞれ思い思いに屋久島に触れひとときの間、現実を忘れて帰っていきました。
僕は、それさえもできませんでした。
なぜ、僕だけがそのようなことになったのでしょうか。
僕が発達障害だからでしょうか。
少し、違うと思います。
純粋に環境適応能力が低いがゆえに、本来大自然に囲まれ人々を癒すはずの屋久島を味わうことができなかった原因です。
ただ発達障害の人は環境に適応しづらいのも事実ですから全く関係ないわけではないと思います。
逃げた先に待っていたもの、それは現実でした。
この時を境に一人で遠出することはなくなりました。
弱者は、どこまで行っても弱者、なんでしょうかね…
弱者でもひととき、心を落ち着かせられる楽園のような場所がないだろうかと今でも夢想します。